鉄道博物館編・第3回。
長らく日本の鉄道を支えてきた蒸気機関車。 ほかの動力機関に比べてエネルギー変換効率が低いため、大量のエネルギーを消費すること、 ばい煙(煤煙)が発生することによる環境への影響が大きいこと(トンネル内では酸欠状態になることも)、 構造が単純な分、運転や整備には高度な技術が必要で熟練にもかなりの時間を要すること、 さらには高速化には限界がある(日本では1954年(昭和29年)にC62が達成した時速129kmが最高)など 鉄道の近代化には不向きな面がありました。 また余談になりますが「蒸気機関車の出す汽笛の音に驚いてニワトリが卵を産まなくなる」との理由で 路線計画を変更して大回りのルートにせざるを得なくなったということもあったようです(^^ゞ それでも昭和後期まで使い続けられたのは、初期の電気機関車やディーゼル機関車の信頼性が低かったことが要因。 もちろん電化が完了した路線が少なかったというのも挙げられますね。 しかし、1960年(昭和35年)から実行された「動力近代化計画」(無煙化ということも)では 1975年(昭和50年)までに蒸気機関車を順次廃止していくことになりました。 進展経緯については省略しますが、計画通り1975年(昭和50年)12月14日の最後の営業運転をもって本線から撤退、 「無煙化」は完了しました。 表紙の写真は、英国生まれの「ED17形電気機関車」です。 1923年(大正12年)「English Electric」社で製造され、日本に輸入されました。 当初は「1040形」(後に「ED50形」に変更)と名づけられ、電化されて間もない東海道線のうち 平坦な区間の東京~国府津(こうづ)間で使用されていました。 そして1930年(昭和5年)に勾配に対応する改造が施されて「ED17形」に名称変更、中央線に転籍しました。 ここでは、引退当時の姿で展示されています。 12mと短い車体にアンバランスに感じるほど大きなパンタグラフが乗っていますね。 ちなみに望遠で撮ってるせいもあって模型のように見えますが本物です(^^; 動力近代化計画 電気機関車 国鉄ED17形電気機関車 足元が暗くなっているためわかりづらいですが、車輪は主台車のみで4軸あります。 形式の「E」は電気(Electric)の頭文字を、「D」はアルファベットの4文字目でこれは車軸数を表します。 1919年(大正8年)から1923年(大正12年)まで14両が製造されました。 ちょっと少ない感じですが、配備された場所が横川~軽井沢の急勾配区間だったことを考えると妥当でしょうか。 ちょっと特殊な運用区間だったため、ほかの機関車とは明らかにちがう点がいくつかあります。 電気機関車ですからパンタグラフはありますが、中央に1基あるだけでしかも駅構内付近でしか使用しません。 では、本線上ではどうしていたのか? 実は地下鉄銀座線や東山線、御堂筋線と同じく「第三軌条方式」を採用していたんです。 当時はトンネルの断面は小さく架線を張ることができなかったことが大きな理由と思われ。 正面右下に見えるオレンジ色の部分が集電を行う「集電靴」(しゅうでんか?)だと思いますが よく見ていなかったので確信が持てません(^^; 国鉄ED40形電気機関車 碓氷峠 1つ上が横川側(坂下)でこちらは軽井沢側(坂上)なんですが、窓も何もなくノッペラボー。 もっとも運転台は片方にしかないからいいんですけどね(^^; 碓氷峠ではラックレールを3列にし、位相を120度ずらして設置しています。 なおこの車両(ED4010)は、1947年(昭和22年)国鉄から東武鉄道に譲渡されました。 その際、ピニオンギアは不要となるため外されています。 東武では日光軌道線に配属され、1968年(昭和43年)の路線廃止まで活躍。 その後は復元保存のために再度国鉄に寄贈され、現在に至ります。 ピニオンギアはてっぱくでの展示にあわせて復元されたものです。 下から見るとアプト式の構造がよくわかります。 現在、国内では大井川鐵道井川線の一部区間においてアプト式での運転を実施しています。 ちなみに国内では「アプト式」が採用されていますが、海外では別の方式が採用されている例があります。 大井川鐵道 ラック式鉄道 この機関車は初期型と改良型の2パターンがあり、これは元々から改良型として製造されたもの。 高速運転に優れた能力を有していて1950年代には超特急「つばめ」の牽引も担当していました。 1986年(昭和61年)3月、紀勢本線での列車牽引を最後に定期運用からは離脱しましたが そのデザインから鉄道ファンの人気は根強く、その後もイベント列車などで活躍する姿が見られました。 現在はJR西日本所属の150号機のみが走行可能な車両として残っています。 国鉄EF58形電気機関車 1952年(同27年)から1958年(同33年)にかけて製造された改良型(明るい緑色)の比較。 台車の長さは変わらず、車体の構造などが変わっています。 初期型も、後に車体を乗せ換えて改良型のように改造されました。 窓の前に大きくせり出したひさしが特徴的ですね。 これは「つらら切り」と呼ばれています。 トンネルの入り口に垂れ下がっているつららによって、運転席の窓が破損することを避ける目的でつけられています。 寒冷地(主に上越線)に転籍した車両につけられ、後に再転籍したときに外された車両も多くありましたが 一部はこのように残され、ほかの車両とはちがった印象を残していたものもあります。 特にこの89号機は、お召し列車担当の61号機とともに関東地区所属の機関車として人気を博していました。 1958年(昭和33年)から1967年(同42年)の間に製造され、主に操車場(ヤード)での入れ替え作業に使われていました。 写真の1号機から110号機までと111号機以降では、パッと見では前照灯の形状が異なる(中身もだいぶ異なる)ので 別の車両のように見えることも。 運用の面では華々しい舞台もなく、地味な存在のまま1987年(昭和62年)の「国鉄民営化」とともにその姿を消してしまいました。 しかしその技術や実績は後の「DD51形」(1962~1978年に649両が製造)に継承され、 現在もディーゼル機関車の主力として活躍しています。 ちなみにDD51形には888号機というぞろ目の車両があり、高崎車両センター高崎支所(高崎駅構内)に現存しています。 残念ながら777号機は1987年2月に廃車になってしまいました。 国鉄DD13形ディーゼル機関車 国鉄時代に進んだ電化ですが、地域によって直流と交流とがあります。 で、赤系統の塗色は交流専用(赤)または交直両用(ピンク)であることがわかるんです。 もっとも最近は各社や所属オリジナルの色が多いので、番号からでないと判断できませんけどね(^^; 使用目的によって大まかに5通りのバリエーションがあり、この車両は4番目のグループの「700番台」。 日本海沿いを主に走るようにするための改良が施されています。 このタイプは全部で91両製造され「777号機」も存在。 しかも現役で稼動中のようです☆ ちなみに所属は秋田車両センターで運用はかなり少ないようなので、お目にかかるのは難しいかも? 国鉄ED75形電気機関車 国鉄とJRの両方で新規製造された唯一の機関車でもあります。 見た目も箱型ではなく、いかにも速そうというイメージになってますね。 大容量(1,000t)かつ最高速度100km/hの高速貨物列車の牽引に対応するため、高出力の電動機を搭載。 1966年(昭和41年)9月に登場した試作機「EF90形」(のちにEF66形901号機に変更)の定格出力は 当時の狭軌鉄道では世界最大だったそうです。 もちろん、量産機のEF66形も出力は同じ。 1985年(昭和60年)3月のダイヤ改正から今年3月まで東京発の寝台特急の牽引も担当していました。 現在も貨物列車の牽引に使われていて、比較的よく見ることができます。 外観の色や意匠が一部変更になっているので、この写真のようなタイプは皆無だったかと。 また、「EF210形」への置き換えも徐々に進んでいます。 余談ですがEF210形は「岡山機関区に所属する省電力大出力機」であることから公募の結果 「ECO-POWER 桃太郎」と命名され、側面に大きく「桃太郎」(桃の字はピンク)の文字が書かれています。 国鉄EF66形電気機関車 次回は、客車・気動車を見てみます。
by sampo_katze
| 2009-09-18 22:50
| 博物館・美術館
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Comments(2)
さすが猫さん。
鉄道を知っている猫さんの説明だからこそ 「なるほど~」となります。 鉄道博物館には行ったことがありませんが、 行った気になっちゃうくらい面白いです。 次回以降も期待大!!
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Commented
by
sampo_katze at 2009-09-20 22:17
放浪中さん、こんばんは♪
え~っと。 さすがのわたしも今回の記事のような内容は自前で説明できませんよ~(^^; こと鉄道に関しては、情報があふれていますからね。 そんなみなさんの知恵をちょっと拝借させていただきました。 てっぱくは、古今東西様々な車両が集まってますからね。 車両に乗って中を見学したり、お弁当を食べたりできるところもあります。 今回のレポートには出てませんが、売店では駅弁も購入できますので ちょっとした旅気分も味わえますよ☆ ちなみに、JR大宮駅の改札内にも全国各地の駅弁が買える売店があります。 もちろん品数は限られますけどね(^^; 遠くに行かなくても名物駅弁を味わえるなんて贅沢ですよね♪
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