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海のさかな水槽のエリア・その1~繁殖と外敵からの防御
冬の明石出張でのオフタイム編・第9回


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「銀鱗の群れ」


前回の後半からの続きで、様々なテーマに沿った内容を展示した水槽を紹介していきます。
最初のテーマは「外洋の生産者」、主人公は「マイワシ」です。
群れをつくることで敵から身を守る代表格ですね。

「テーマ「外洋の生産者」  弱い魚は群れたがる、群れをつくるマイワシ
 イワシの群れは、とくにリーダーらしい魚も見あたりませんが、急に方向を変えるようなことがあっても、
 群れは、落ちこぼれの魚もなく、整然とまとまっています。つまり、それぞれのイワシが、同じスピードで、
 同じ方向に、向きを変えることができます。
 水そうの中では、イワシは、水の流れに向かって一定方向に泳ぎます。イワシは、ひかく的酸素消費量の高い魚ですので、
 流れに向かって泳ぐことで、えらの中により多くの水を通し、合理的な酸素補給をおこなっているのです。
 イワシのまとまりのある群れは、眼と、水の動きの変化を敏感にキャッチする側線とによって、おたがいの距離や
 角度を上手く保っているのです。」


「小さな魚の群れが大きな魚に出会ったら?
 小さな魚の群れが大きな魚に出会ったり、おそわれたりしたとき、どんな行動をとるのでしょうか。
 群れをいっそう密集させて、1ぴき1ぴきが目立たない方法をとったり、あるときは、散らばって、相手を混乱させ、
 危険からのがれています。

 敵に出会った時  群れはいっそう固まる
 敵に襲われた時  いっせいによけて、流れるように敵の後へまわり込み、再び群れをつくる」

※説明板より引用、以下同じ


表紙の写真は、水槽内を泳ぐ「マイワシ」です。
体の側面に黒い点が1列に並んでいるのが1つの特徴で、別名「ナナツボシ」の由来になっています。
ただ個体によってはこの点がないものや2列になっているのもいますね。

実はこの水槽は水流が左から右へと流れていて、「マイワシ」たちはそれに合わせて泳いでいます。
円柱状の水槽になっていて、ガラスのそばをくるくる回るように泳いでいるパターンをよく見ますが、
これだと「マイワシ」が横に動くので目で追うのがちょっと大変。
でもこちらの展示方法ですと左右方向の動きがほとんどないため、観察も撮影も比較的簡単にできるのでうれしいですね。


「八景島シーパラダイス」で見た、約5万匹もの「イワシ」が織りなすダイナミックな動きはこちら
2009年10月12日の記事 Silver Whirlwind


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続いては「行動の分化(繁殖①) 卵を産むネコザメと、胎生のオオセ」です。
魚類が子孫を残す方法は「卵」を産む「卵生」が多いですが、
「サメ」の仲間は「幼魚」を産む「胎生」も多く、そのパターンも実に様々です。
ここでは「卵生」の「ネコザメ」と「胎生」の「オオセ」が展示されていました。

「お母さんのお腹の中で  ~卵?共食い?人と一緒?~
 卵生 卵殻に包まれた卵を一度に2個産む。卵から産まれるまで長いと1年ほどかかる。
    (例 ネコザメ、イヌザメ、他)
 胎生 自分のお腹に付いている卵黄の栄養分だけで大きくなる。多くのサメがこの繁殖方法である。
    (例 ジンベエザメ、ノコギリザメ、他)
    子宮内で兄弟と共食いをして最強の1匹が産まれてくる共食い型や、我々人と同じくヘソの緒を通じて子を育てる
    胎盤形成型などがある。(例 ホホジロザメ、シュモクザメ、他)」



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2匹仲良く並んでいる「ネコザメ」。
つがいかな?
夜行性なので、見学する時間帯はたいていどこで見ても底の方でじっとしています。
最初の「波の大水槽」ではめずらしく泳いでいる様子を見ることができましたが、これはレアケースと思われ。
地下にある薄暗い水槽ならともかく、日光がさんさんとふりそそぐ水槽でしたから。

先に書いたように「卵生」ですが、孵化するまでは約1年間と長くその幼魚は20cm弱になっているんだそう。
ある程度成長してから孵化することによって、外敵から身を守りやすくするということなんでしょうか。

「ネコザメ  Heterodontus japonicus
 北海道以南:~朝鮮半島・東シナ海.
 沿岸の浅瀬や岩場、藻場などに生息する。2つの背びれには棘がある。臼のような歯を持ち、
 サザエなどの硬い貝類も砕いて食べることから別名「サザエ割り」とも呼ばれる。
 卵生で、らせん状のひだがある卵を産む。」



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同居している「オオセ」。
水槽の奥の方にいて、しかも岩と同化しているので少々見づらいですが(^^;
こちらは「胎生」で、お腹に「卵黄」がくっついている約20cmほどの幼魚を産みます。
「サメ」の仲間は受精から孵化・出産までの期間が長い傾向にあるようですね。

「オオセ  Orectolobus japonicus
 南日本:西太平洋域.
 浅瀬の岩礁地帯や珊瑚礁域に生息する。自ら泳ぎ回って餌を探すのではなく、獲物が来るのをじっと待つタイプ。
 最大で全長1.2m程。卵黄依存型の胎生で20匹ほどの仔を産む。」



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次は「究極の適応(擬態③) 岩の間に隠れる魚」です。
ここにいたのは「ウツボ」の盛り合わせ(笑)
みんなガラスのすぐそばにいてくれていたのでうれしい限りです(^^)


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まずは「ウツボ」
頭の黄色がかなり強く出ているので最初は別種?と思ってしまいましたが、このような色もあるそうです。
大きな目と口、そして口元にのぞく鋭い歯を見ると獰猛なイメージを感じますね。
でもこちらから手を出さなければ大丈夫とのこと。
また鼻の穴、「鼻孔」(びこう)からは管が飛び出していて、ちょっとユーモラスですね。
その後ろにも小さな穴があいてますがこちらも同じく「鼻孔」で、それぞれ「前鼻孔」「後鼻孔」といいます。
一般に「魚類」はこのように2対の「鼻孔」を持っているんだそう。
知らなかった~(^^;

「ウツボ  Gymnothorax kidako  Brutal moray; Moray eel
 南日本の琉球列島を除く温帯域。
 昼間は岩礁や珊瑚礁のすき間に体を入れ、頭部を出している。
 タコ類が好物だが魚も食べる。夜、行動する。」


鼻孔@Wiki


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お次は派手な装いの「トラウツボ」
体の色や模様も目立ってますが、それより何より目立つのが目の上あたりにある角のような突起。
実はこれは先に出てきた「後鼻孔」です。
その様はまさに「Dr.スランプ」に出てくる「ニコちゃん大王」!(古っ)
で、「前鼻孔」はこの写真ではわかりませんが口の先あたりにあるとのこと。
そして口の中に規則正しく並んでいる鋭くとがった歯はインパクト大。
美しさと凶暴そうな風貌、そしておちゃめな鼻とギャップがいろいろあって面白い存在です☆

「トラウツボ  Muraena pardalis  Dragon moray eel; Hawaiian doragon eel
 南日本;インド洋、太平洋。
 岸礁帯の穴や割れ目にすむ。他のウツボに比べ鼻先の管が長く、歯も鋭い。」



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お初の「サビウツボ」
吻があまり長くないのと頭が盛り上がり気味だからか、口がやや小さく感じます。
実際には変わらないんでしょうけどね。

「サビウツボ  Gymnothorax thyrsoideus  Slender moray
 和歌山県以南;西部太平洋、サモア。
 琉球列島のサンゴ礁では最も普通に見られる。ウツボのなかでは小型で全長50~60cmまで。」



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この子はおでこの部分が大きく膨らんでコブのようになっています。
これは「コブダイ」「ナポレオンフィッシュ」などと同じく、オスの成魚に見られるものなんでしょうかね。


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ここからは「究極の適応(身を守る様々なやり方)」のエリア。
その冒頭にあるのが「ハコフグ」の皮膚の硬さを実感できる体験コーナーです。
表面はザラザラしており、指を押し込んでみるととても硬くてまるで鎧のようになっているんですよ。

話は変わりますが、「長崎県上五島」の郷土料理に「かっとっぽ」というものがあります。
これは「ハコフグ」のお腹をくりぬき、それをそのまま器にして味噌焼きにするというもの。
それができるのも体表が鎧のように堅いからこそでしょう。
さらに皮膚からは「パフトキシン」という毒も分泌されるという徹底ぶり。
愛らしい外観とは裏腹に、鉄壁の防御で身を守っているんですね。

「ハコフグの硬い体
 魚が身を守る方法はいろいろありますが、ハコフグは自分の体を硬く強固なものにして守っています。
 一寸触ってみて下さい。これは鱗(うろこ)がお互いにつながって箱型の硬い体を作っているのです。
 防備できない場所といえば、わずか、口、目、ひれの部分に過ぎません。
 これでは、いくら丈夫な歯をもった魚でも歯がたちません。その上この魚は頑丈な体の外を覆う皮膚に、
 パフトキシンという毒をもっており、敵に襲われたり刺激を受けたりすると、その毒を浸出させて敵を追っ払っています。」



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鎧で身を守るという点ではこちらの「マツカサウオ」も同じ。
見た目は「パイナップル」みたいですけどね。

「マツカサウオ  Monocentris japonica  Pinecone fish; Knight fish;
 南日本;~インド洋、西オーストラリア。
 沿岸のやや深い海底にすみ、エビなどの動物を食べる。発光バクテリアが共生し、あごの下が光る。」



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体にしま模様が入るその名も「シマフグ」
目の周りやくちびる、ひれの先などに黄色のアクセントが入っていて意外と派手な印象です。
「卵巣」「肝臓」に毒を持っていますが、このパターンは「フグ」の仲間には多いですね。
「ふぐ料理」で珍重される「トラフグ」もこれにあてはまります。
また季節が変わると特定の内臓に毒を持ったり強毒化したりする種もあります。

「シマフグ  Takifugu xanthopterus  南日本:黄海~東シナ海
 名前のとおり背中にしま模様があり、全ての鰭が黄色く、特長的な色彩のフグ。
 大阪湾や瀬戸内海でも時々見られる。卵巣と肝臓には強い毒をもつが、筋肉や皮膚には毒がない。」



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おなじみ「ハリセンボン」
毒は持っていませんが、その代わりに代名詞でもある体の表面のトゲで身を守ります。
残念ながらふくらんでいる様子をこの目で見たことはありません。
水槽の中ではそうそう危険はないですからね。

「ハリセンボン  Diodon holocanthus  Porcupinefish; Burrfish, Balloonfish
 本州中部以南;世界中の温帯・熱帯海域。
 敵に襲われると、イガグリのようにふくらみ、鋭いとげを立てる。毒はない。
 黒潮にのって日本沿岸に近づく。」



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「ハリセンボン」にちょっと似たシルエットの「イシガキフグ」
こちらにもトゲはありますが、長くはなく小さな突起といった感じです。
またこの子はなぜか呼吸のたびに舌を出したり引っ込めたりするような仕草をしていました。
さすがにアッカンベーのように出てきたりはしませんでしたが、なかなかユーモラスでしたよ(^^)

「イシガキフグ  Chilomycterus reticulatus Pacific burrfish
 本州中部以南;~太平洋の温、熱帯海域。
 サンゴ礁、岩礁にすむ。主として単独で生息し、岩穴に潜んだり、岩の下に入っていることが多い。
 食用になる。」



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こちらもおなじみの「ミノカサゴ」
その美しい容貌とは裏腹に猛毒のあるトゲを持つ危険な魚です。

「ミノカサゴ  Pterois lunulata
 Lionfish; Butterfly fish; Turkey fish; Dragon fish; zebra fish
 北海道南部以南;~インド洋、太平洋。
 岩礁性の魚。背びれのとげには強い毒がある。形や色も目立ち易く、毒のある自分を
 はっきり相手に分からせるようにしている。」



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よく似た種の「キリンミノ」
パッと見は「ミノカサゴ」と瓜二つですが、この種は顔にふさ状の「皮弁」がついているので区別することができます。

「キリンミノ  Dendrochirus zebra  Dwarf lionfish; Zebra fire fish
 南日本;~インド洋、南太平洋。
 浅い岩礁やサンゴ礁にすみ、生きた小魚を捕食する。ひれのとげにある毒腺はミノカサゴ類中最も強力である。」



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顔のアップ。
特に目立つのがひげのように見える口のまわりの「皮弁」です。
見分けの大きなポイントですね。


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こちらも「キリンミノ」ですが、黒の色素が少ないからでしょうか。
赤みが強く鮮やかさが際立っていて、とても目を引きました。
これまでたくさん見てきましたが、こんなに華やかな色の個体は初めてです(^^)


すべて D700+24-120mmF4G/VR


次回は、ウミヘビ専用水槽ほかです。
by sampo_katze | 2015-04-22 21:10 | 水族館 | Comments(0)


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