クジラ類の骨格の構造とは
名古屋訪問Ⅱ~名古屋港水族館編・第7回


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「シャチの骨格標本」


「北館」2階の「イルカプール」から奥へと進むと「進化の海」というエリアがあります。
ここには骨格標本の実物あるいはレプリカが展示されているほか、どのように水中生活に適応するために進化してきたかを
地上の「哺乳類」との比較を交えながら学ぶことができます。
「現存種」「化石種」の両方が展示されているのはめずらしいですね。
今回は「現存種」にスポットを当てて紹介していきます。


表紙の写真は、当館のシンボル的存在でもある「シャチ」の骨格標本の1つと生体模型です。
頭部だけの骨格は「東京都上野」にある「国立科学博物館」で見たことがありますが、全体のは初めて。
しかもここでは3体もの標本が展示されているとのことで、なかなか見ごたえがあります。
ちなみに「国立科学博物館」では「シャチ」と、「ヒゲクジラ」の仲間の「ミンククジラ」の頭部も展示しています。
こちらもぜひ!

「シャチ
 英名 Killer whale / Orca / Grampus   学名 Orcinus orca
 体長 5.8m   年齢 22才(雄)
 シャチはマイルカに属するハクジラで、赤道から極地まで世界の海に広く分布しています。
 雄は最大1.8mにもなる真直ぐ伸びた背びれをもち、雌はやや小さな鎌形の背びれをもっていて雌雄が区別されます。
 サケ、ニシン、ウミガメ、イルカなどを食べ、ときにシロナガスクジラさえ襲い「海の王者」の別名をもちます。
 ここで見られるシャチの骨格標本(3体)は、すべてアイスランドの北部海岸に死体で漂着していたものから
 許可を得て作られました。」

※説明板より引用、以下同じ


「国立科学博物館」で見た「シャチ」などはこちら
2014年1月16日の記事 地球の多様な生き物たち~Ⅰ:海洋生物の多様性


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「シャチ」の歯並びのアップ。
意外なことに先端はとがってはおらず、何本かは中央に小さな穴があいているのもあります。
ただその先端部分の色がほかと異なっているので、復元に際して補修などをした部分なのかもしれません。


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陸上の肉食動物の代表として「ライオン」との歯並びを比較してみます。
「ライオン」は口の入り口に大きな「犬歯」「キバ」がついています。
ほかの歯と比べるとその存在は大きく目立っていますね。
またほかの歯もこれではよくわかりませんが、場所によって形や大きさが異なっています。
このように異なる形や大きさで形成されているようすを「異形歯性」(いけいしせい)といいます。
これに対し、「シャチ」はすべて同じ(ような)形と大きさで構成されていてこれは「同形歯性」といいます。
一般的な「哺乳類」は「異形~」なんですが、海で生活するのにはこちらのほうが適しているということなのでしょう。


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頭骨のアップ。
写真の角度がイマイチなのでちょっとわかりづらいかもしれませんが、頭頂部付近に大きな穴が開いています。
これは一体?次の図で説明されています。


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一般的な「哺乳類」、ここでは「イヌ」を例にしていますが、鼻は「吻」(ふん)の先端付近についています。
ですが「シャチ」では頭頂部付近に「噴気孔」があります。
どうしてこのような位置に移動したのでしょうか?
次の説明を見てみましょう。

「呼吸するための骨格変化  頭骨のテレスコーピング
 クジラが海で生活するようになって起きた大きな変化の一つが著しい頭骨の変形です。哺乳動物であるクジラは
 時々水面に鼻を出して肺呼吸することと、海水の抵抗を少なくして、どのように効率的に泳ぐことができるかを
 解決しなければなりませんでした。
 クジラはこの問題を見事に解決しました。吻(ふん くちばし)の先にあった外鼻孔(がいびこう)を頭頂部に移動させ、
 効率的な呼吸を可能にしたのです。
 またこの時、吻部が後方まで大きく発達したため、頭頂骨は左右におしやられ、テレスコーピングと呼ばれる
 現象が起きました。これによってスムーズに呼吸をしながら遊泳できる海の哺乳類となっていったのです。」



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「聴覚」の受容器である「内耳」は下あごの根元の後方にあります。。
その前方には音を伝える脂肪組織である「メロン」または「メロン体」があります。
下あごの大部分を占めているんですね。


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水中で「イルカ」たちはさまざまな音を出してお互いのコミュニケーションをとっています。
この図はその原理を説明しています。
外からの音は下あごを経由して「内耳」に入りますが、こちらの説明では骨を通ってとありますね。
また外へと伝える音は「鼻孔」から上あご側の「メロン」を通って発射されます。


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「シャチ」の首の部分。
外から見るとほとんどないほど短くなっていますが、地上の哺乳類と同じく「頸椎」(けいつい)があります。


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「ヒョウ」との比較。
どちらも7個の「頸椎」が並んでいるのがわかります。
ちなみに首の長い「キリン」も「頸椎」は7個ありますが、それぞれがとても長くできているんですよ。


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これは「胸びれ」の骨格。
これだけ見ると「ニンゲン」などと同じように5本の指があることがわかります。


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さらにつけ根にあたる「肩甲骨」に至るまで、似たような構造を持っているんですね。

「安定した泳ぎのための骨格変化  胸びれの構造と肋骨
 遠い祖先が持っていた前足は大きな胸びれに変化しました。この中には私たちと同じように上腕骨(じょうわんこつ)、
 橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)、指骨(しこつ)があり、5本の指の骨もあります。これは海へもどった哺乳類であることの
 何よりの証拠です。クジラの仲間では泳ぐための構造が特殊化し、指の骨がさらに増えているものもいます。
 胸びれは上下運動の制御や舵とり、ブレーキなどの役割を果たし、背びれは背中の皮膚が伸びたもので、骨はなく、
 安定した泳ぎのための役割を果たしています。シャチの肋骨は11から13対あり、胸腔(きょうくう)を支えています。
 クジラの仲間には水圧の変化に対応して肋骨が折りたたまれるように自然に変形するものもいます。」



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では、後ろの「尾びれ」はどうなっているのか?
「尾びれ」は「胸びれ」とはちがって「指骨」がありません。
「胸びれ」は「前足」からの変化ですが、「尾びれ」は「後足」ではなく「尻尾」から変化したものだからなんですね。

「尾びれの形成と尾椎
 クジラの尾は後ろ足が変わったものではなく、尾の先端の皮膚が伸びて変化したものです。尾びれの中には
 先端近くまで尾椎の骨が走っています。」



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体の中心を走る「脊椎」(せきつい)。
おおまかに4つの部位に分けることができます。

「脊椎のつくりの特徴
 鯨類の骨は、外部は緻密(ちみつ)で堅固(けんご)な構造をしていますが、内部はスポンジ状になっていて、
 空洞の部分のほとんどは油分を多く含んだ骨髄(こつずい)で満たされています。また多くの血管が走り、酸素や
 栄養分を供給するなどエネルギーの貯蔵庫の役割も果たしています。

 椎体(ついたい)    体の中心を走る丸い脊椎
 棘突起(きょくとっき) 尾を上下に動かして前進させるための筋肉を固定している。
 横突起(おうとっき)  背中を曲げるための筋肉を固定している。鯨類は他の動物に比べ、特別発達している。
 V字骨        シャチをはじめとする鯨類は、尾びれと尾椎が一体となった強力な上下運動によって推進力を生みだす。
            この骨はこのための筋肉をしっかりと支えている。」



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骨格標本の「脊椎」。
上に並んでいるのが「棘突起」、横に広がっているのが「横突起」で下側が「V字骨」です。


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2種の「突起」は「脊椎」全体にあるのに対し、「V字骨」は「尾びれ」のつけ根あたりにのみあります。
速く泳ぐためにこの部分が発達してきたということのようですね。


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最後は宙に浮いているように見える2本の小さな骨。
これは「骨盤」の名残りで、かつて「後足」があったことを物語っています。
この骨の存在自体は別の場所で見たことがったので知ってはいましたが、そこでは説明がなかったので
これは一体何の骨なんだ?とずっと疑問に思っていました。
まさかここでそれを解消できるとは(^^;


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次回は、クジラの祖先についてです。
by sampo_katze | 2016-05-04 21:00 | 水族館 | Comments(0)


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