京都鉄道博物館に行こう!編・第10回
「京都鉄道博物館」の屋外にある「扇形車庫」。 ここに展示されている静態保存機の続きです。 今回は、主に旅客列車をけん引する目的で製造された「蒸気機関車」たちを紹介していきます。 表紙の写真は、大型の幹線旅客列車用「蒸気機関車」として開発された「C51形」です。 製造初年は1919年(大正8年)で、当時は「18900形」という名称でした。 その後、1928年(昭和3年)までに289両が製造されています。 名称が「C51形」に変わったのは製造最終年の1928年6月のこと。 この年の製造数が8両だったことから、当初から「C51形」として登場したのは相当レアだったでしょう。 最高運転速度を100km/hとすべく、動輪に直径1,750mmという大形のものを採用。 これは当時の「狭軌用蒸気機関車」としては世界最大のものだったそう。 ですが、このサイズはその後登場した大型旅客機に継承されていきました。 ここにいる239号機は、1927年(昭和2年)に製造されたもの。 「お召列車」けん引の専用機に指定され、翌年の11月から1953年(同28年)5月まで担当。 その期間は25年、回数は104回にも上りました。 この回数は専用機としては最大級なんだそう。 そんな背景があってか、1962年(同37年)10月に廃車になるものの解体を免れます。 そして保存先の「新潟鉄道学園」で、「ボイラー」を切開した状態で教習用として展示されていたそう。 1972年(同47年)の「梅小路蒸気機関車館」開館に合わせて再整備され、現在に至ります。 「お召列車の専用指定機 C51形239号機 準鉄道記念物 製造年:1927(昭和2)年 製造所:汽車製造 全長:19.99m 自重:113.7t 動輪直径:1,750mm 軸配置:2C1 最高運転速度:100km/h 総走行距離:不明 1919(大正8)年から1928(昭和3)年にかけて289両が製造された、大型の旅客用蒸気機関車です。 1,750mmの大型動輪が初めて採用された機関車で、1930(昭和5)に運転が開始された特急「つばめ」を けん引したことでも知られています。本機はお召し列車の専用指定機として104回使用されたのち、 直江津機関区などに配置され、北信越から東北にかけて活躍しました。 本形式は「シゴイチ」の愛称で親しまれています。」 1928年(昭和3年)から1930年(同5年)まで、97両が製造されました。 国内で運用されていた「蒸気機関車」は2シリンダーですが、これは唯一の3シリンダー機です。 正面の「煙室扉」、「ナンバープレート」とハンドルがついている部分ですね。 その下が前方に出っ張っていて、「煙室扉」の下も水平になっています。 独特な前面構造になっているんですね。 特急・急行列車を中心に投入されましたが、構造が複雑だったことなどから保守が非常に大変だったそう。 また戦時中の酷使や整備不良などがたたり、1948年(昭和23年)から1950年(同25年)にかけて全車が廃車に。 これは国産大型機関車としてはもっとも早いものでした。 ただし、きちんと整備された車両はとても扱いやすかったという一面もあったそうです。 この45号機は1950年(昭和25年)に引退。 「国鉄吹田教習所」で教習車として使用されたのち、「鷹取工場」で保管されていました。 その後、「交通科学博物館」~「梅小路蒸気機関車館」を経て現在に至ります。 「国産では唯一の3シリンダー機 C53形45号機 準鉄道記念物 製造年:1928(昭和3)年 製造所:汽車製造 全長:20.62m 自重:129.9t 動輪直径:1,750mm 軸配置:2C1 最高運転速度:100km/h 総走行距離:不明 1928(昭和3)年から1930(昭和5)年にかけて97両が製造された、国産では唯一の3シリンダーを持つ 大型の旅客用蒸気機関車です。本機は梅小路機関区や姫路機関区、宮原機関区に配置され、 特急列車や普通列車のけん引機として近畿、中国地方で幅広く活躍しました。 しかし構造が複雑で保守も困難であり、C59形蒸気機関車の登場によりその役割を終えました。 本形式は「シゴサン」の愛称で親しまれています。」 「タンク式」は、動力源となる「石炭」と「水」を本体に搭載して運行するタイプ。 後部に「炭水車」がなく搭載量が限られるため、長距離運転には向いていません。 ですがその分後方視界もよくバック運転も容易で、「転車台」がない路線でも運用が可能です。 1932年(昭和7年)から1947年(同22年)までの間に381両が製造されました。 ほかに民間向けに20両が、「国鉄」向けとほぼ同じ仕様で製造されています。 当初は主に西日本に配置され、徐々に全国へと広まっていきました。 その性能を生かし、ローカル線での列車けん引に活躍。 「ディーゼルカー」の台頭によりローカル線から撤退しつつも、貨物列車けん引や入換用として使用。 多くの車両が遅くまで現役を続けていました。 そのためか、2019年現在で5両が動態保存機として残っています。 「ローカル線で活躍した中型タンク式蒸気機関車 C11形64号機 準鉄道記念物 製造年:1935(昭和10)年 製造所:川崎車輌 全長:12.65m 自重:66.8t 動輪直径:1,520mm 軸配置:1C2 最高運転速度:85km/h 総走行距離:174万1千km ※1986(昭和61)年時点 1932(昭和7)年から1947(昭和22)年にかけて381両が製造され、ローカル線や都市近郊の短距離運転用に設計された 旅客、貨物両用の中型タンク式蒸気機関車です。本機は湊町機関区に配置され、関西本線などで使用されたのち、 1939(昭和14)年以降は北海道や東北地方で活躍しました。 本形式は「シーのチョンチョン」の愛称で親しまれています。」 1935年(昭和10年)から1937年(同12年)までの間に62両が製造されました。 また「丙線」とは「線路等級」で、簡単に言えば急カーブと急こう配の多い路線のこと。 この呼称は、現在は使われていない?ようですが。 さらに63号機以降も、設計変更をした上で製造を継続する計画がありました。 ただその変更範囲はとても広く、もはや別形式といえるほどだったため「C57形」として製造されています。 ここにいるのはトップナンバー、1号機です。 説明にあるように、本機は主に「北海道」で活躍していました。 「北海道」では1974年(同49年)ころまで運用が続いたそうなので、最後まで活躍したうちに1両のようです。 「スポーク動輪を有する最後のパシフィック機 C55形1号機 準鉄道記念物 製造年:1935(昭和10)年 製造所:川崎車輌 全長:20.38m 自重:113.2t 動輪直径:1,750mm 軸配置:2C1 最高運転速度:100km/h 総走行距離:322万8千km ※1979(昭和54)年時点 C51形の改良機として設計され、1935(昭和10)年から1937(昭和12)年にかけて62両が製造された、 大型の旅客用蒸気機関車です。スポーク動輪(車輪中心のハブからスポークが放射状に伸びている動輪)を持つ パシフィック機(軸配置2C1)では最後の形式になっています。 本機は苗穂機関区や小樽築港機関区などに配置され、おもに北海道で活躍しました。 本形式は「シゴゴ」の愛称で親しまれています。」 「スポーク動輪」と呼ばれる「自転車」の車輪のような形状が採用されています。 ただ、これを採用した大型の「蒸気機関車」は「C55形」が最後。 以降に登場した機関車では、「ボックス型」と呼ばれるタイプに代わっていきました。 「ボックス型」で、長円形の穴があけられたような形になっています。 1938年(昭和13年)から1947年(同22年)までの間に431両が製造されました。 その万能ぶりから全国各地に配属され、優等列車けん引は少なかったものの幅広く活躍しました。 ここにいるのはトップナンバーの1号機。 1972年(同47年)に引退するものの、1979年(同54年)に「C57 1」とともに「SLやまぐち号」のけん引を担当しました。 その後「全般検査」の更新が行われないことになり、残念ながら1984年(同56年)1月のけん引を最後に運用離脱。 「梅小路蒸気機関車館」で静態保存されることになりました。 ここでは簡易的な「お召し列車」けん引機仕様になっていて、正面には「菊の紋章」を掲げ 「煙室扉」のハンドルも「桜」?をモチーフにしたものに代わっています。 ちなみに、現役時代には「お召し列車」をけん引したことはなかったそう。 「ローカル線で活躍した客貨両用蒸気機関車 C58形1号機 準鉄道記念物 製造年:1938(昭和13)年 製造所:汽車製造 全長:18.27m 自重:100.2t 動輪直径:1,520mm 軸配置:1C1 最高運転速度:85km/h 総走行距離:206万8千km ※1986(昭和61)年8月時点 1938(昭和13)年から1947(昭和22)年にかけて427両が製造された、中型の客貨両用蒸気機関車です。 支線も走行できるように設計されており、北海道から九州地方までの全国のローカル線で活躍しました。 本機は大宮機関区や千葉機関区に配置され、関東地方で運用されたあと、北海道の最終期には、 寝台列車などをけん引しました。本形式は「シゴハチ」の愛称で親しまれています。 ※この他に、天塩鉄道、三井芦別鉄道にもそれぞれ2両ずつ納入されました。」 これも「お召し列車」仕様によるものです。 1941年(昭和16年)から1947年(同22年)までの間に173両が製造されました。 なお133~155号は欠番のため、ラストナンバーは196号機です。 当初は「東海道・山陽本線」、同線の電化後は「鹿児島本線」や「東北本線」の特急・急行列車のけん引を担当。 また、一部の車両(47両)は「C60形」へと改造されました。 この164号機は最後まで残った3両のうちの1両で、「広島県」の「糸崎機関区」に所属しました。 そこから「広島駅」寄りにある急勾配区間、通称「瀬野八」(せのはち)を通過する列車の補機も務めています。 補助する区間が終了すると走行中に連結器を開放し、切り離すということもしていたそう。 このときは知らなかったのですが、連結器の左側にそのギミックが今でも残っています。 1970年(昭和45年)7月に休車となり、その後保存先となる「梅小路機関区」に転属となりました。 「数々の特急列車をけん引した大型蒸気機関車 C59形164号機 準鉄道記念物 製造年:1946(昭和21)年 製造所:日立製作所 全長:21.57m 自重:134.6t 動輪直径:1,750mm 軸配置:2C1 最高運転速度:100km/h 総走行距離:200万2千km ※1979(昭和54)年時点 1941(昭和16)年から1947(昭和22)年にかけて173両が製造された大型の旅客用蒸気機関車で、 最後のパシフィック機(軸配置2C1)です。東海道本線が全線電化されるまで「つばめ」「はと」 「さくら」「かもめ」などの特急列車をけん引し、山陽本線などでも活躍しました。 本機は梅小路機関区と糸崎機関区に配置されました。本形式は「シゴク」の愛称で親しまれています。」 1948年(昭和23年)から翌1949年(同24年)までの間に49両が製造されました。 旅客用として製造されたものとしては最後の機種です。 このあと「C63形」も計画されましたが、製造開始決定を前にして計画は中断。 その後の「動力近代化計画」、いわゆる「無煙化」により製造されることなく終わっています。 この「C62形」は、先の「C59形」に代わり特急・急行列車のけん引する目的で造られました。 とはいえ名目上は新造ではなく、貨物用大型機関車「D52形」からの改造となっています。 もっとも使用されたのは「ボイラー」くらいで、その他の部分は「C57形」などの設計を流用しているそうですが。 「D52形」の「ボイラー」は国内では最大級で、かつ動輪も旅客用の1,750mmのものを採用(「D52形」は1,400mm)。 このため「車両限界」に触れないよう、煙突など「ボイラー」上にある機器類の形状が変更されています。 出力は旅客用としては国内最大、貨物用を含めても「D52形」に次ぐ2番目の大きさを誇ります。 この高出力を生かして幹線での優等列車けん引に活躍しました。 特に17号機は1954年(昭和29年)12月15日、129km/hの速度を記録しています。 これは「狭軌における蒸気機関車最高速度」であり、この記録はいまだに破られていません。 その17号機は「愛知県」にある「リニア・鉄道館」で保存・展示されています。 ここにいるのはトップナンバーの1号機。 1948年(昭和23年)に「山口県下松市」(くだまつし)の「日立製作所笠戸工場」で落成。 「山陽本線」を中心に各特急列車のけん引に活躍しました。 1966年(同41年)に運用離脱し、除籍後は解体される予定でしたが中止に。 その後は「広島県」や「山口県」を転々としつつも保存され、1994年(平成6年)に当地へとやってきました。 2号機の方が人気があっただけに、残っていたのはよかったですね。 「日本最大の旅客用蒸気機関車 C62形1号機 準鉄道記念物 製造年:1948(昭和23)年 製造所:日立製作所 全長:21.47m 自重:144.0t 動輪直径:1,750mm 軸配置:2C2 最高運転速度:100km/h 総走行距離:208万3千km ※1967(昭和42)年時点 1948(昭和23)年から1949(昭和24)年にかけて49両が製造され、特急列車などのけん引に使用された 日本最大の旅客用蒸気機関車です。 ボイラーはD52形蒸気機関車から流用、シリンダーと走行装置はC59形蒸気機関車と同じものを新製、 自動給炭装置(メカニカルストーカー)も取り付けられています。 本機は広島第二機関区や宮原機関区などに配置され、山陽本線を中心に特急「つばめ」「はと」をはじめ、 特急「かもめ」や急行列車などのけん引機として活躍しました。 本形式は「シロクニ」の愛称で親しまれています。」 すべて D700+24-120mmF4G/VR 次回は最終回、扇形車庫の動態保存機たちです。
by sampo_katze
| 2019-09-05 21:00
| 博物館・美術館
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