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扇形車庫の動態保存機たち
京都鉄道博物館に行こう!編・最終回


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「ウェスタンスタイルが凛々しい」


「京都鉄道博物館」の屋外展示の1つである「扇形車庫」
前身の「梅小路蒸気機関車館」を引き継ぎ、国内で活躍した数多くの「蒸気機関車」たちを見ることができます。
入口でもらえる「リーフレット」によれば、保存・展示されている車両は20両。

ですが、この日は「8620形8630号機」「C61形2号機」「D51形200号機」の3両が不在でした。
このうち「D51 200」は本線での営業運転が可能な車両で、「SLやまぐち号」の運用で出張。
「C61 2」はこの年(2018年)7月15日、館内走行中での脱輪事故の影響で修理中?
「8630」は館内で「スチーム号」けん引を担当しているようですが、この日は別機が担当していました。
ですので不在の理由は点検かな?
ということで、残念ながらコンプリートすることはできませんでした。
それでも17両も同時に見られるのですから、ぜいたくですよね。

さて、今回は自走可能な「動態保存機」たちを見ていくことにします。
といっても、火が入って蒸気を噴き出すなど動いている状態を見られたのは2両だけ。
それでもどの車両もピカピカに磨き上げられていて、現役で稼働している雰囲気を味わえます。


表紙の写真は、「北海道」初の鉄道開業時に導入された「7100形蒸気機関車」です。
ここにいるのはその1号機で、1880年(明治13年)に「アメリカ」から輸入されました。
1885年(同18年)までに導入された6両には愛称がつけられ、1号機は「義經」(義経・よしつね)と呼ばれていました。
前端部には「カウキャッチャー」と呼ばれる「排障器」、煙突にはダイヤモンドのようなシルエットを持つ
大形の「火の粉止め」(「ダイヤモンドスタック」とも)、そして大きなランプがついています。

1号機はその後、「官設鉄道」の所属となり車番も「7100形7105号機」と変わっています。
1923年(大正12年)に廃車となりましたが、1952年(昭和27年)の「鉄道開通80周年」に合わせて動態復元。
「大阪市港区」にあった「交通科学博物館」での保存を経て、現在に至ります。










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館内の動態保存機の中でもっとも小さい「B20形」です。
その大きさから明治~大正時代に製造されたもののようですが、意外にも戦時中に製造されたもの。
1945年(昭和20年)から1947年(同22年)にかけて15両が製造されました。
小型で非力であることに加え、戦時中の設計・製造だったことから活躍の場は限られていたようです。

ここにいる10号機は、1946年(昭和21年)に製造されたもの。
「姫路第一機関区」「鹿児島機関区」に配属されました。
引退後の1972年(同47年)に「梅小路蒸気機関車館」に収蔵され、動態保存されるはずでしたが
1979年(同54年)に車籍を失っています。
ですが2002年(平成14年)に「梅小路蒸気機関車館」開館30周年、「JR西日本」発足15周年を迎えるにあたり
修繕工事を施され、動態復元されました。

「戦時規格形の入換専用機 B20形10号機  動態保存・準鉄道記念物
 製造年:1946(昭和21)年   製造所:立山重工業
 全長:7.00m  自重:20.3t  動輪直径:860mm
 軸配置:B  最高運転速度:45km/h  総走行距離:24万2千km ※1979(昭和54)年時点
 
 1945(昭和20)年から1947(昭和22)年にかけて15両が製造された小型蒸気機関車です。
 本機は姫路機関区や鹿児島機関区に配置されていました。軽量でけん引力も小さいため、
 構内での入換専用機として使われました。2002(平成14)年に梅小路蒸気機関車館30周年を記念して動態復帰しました。
 本形式は「ビーコロ」「豆タンク」の愛称で親しまれています。」



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細身のボイラーと細長い煙突がかわいらしいですね。
背中の機器箱が角ばっているのは、形状を簡略化することが目的。
本来ならドーム状になっているところですが、戦時中なので凝ったことはできなかったんですね。


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亜幹線旅客用機関車「C55形」の改良を目的に、設計を変更して登場した「C57形」です。
当初は「C55形」の63号機以降となるはずでしたが、改良が広範囲になったため新形式が割り当てられました。
1937年(昭和12年)から1947年(同22年)までの間に201両が製造されました。
動輪直径は「C51形」から導入された、1,750mmの大型のものを引き続き採用。
それに反して細身のボイラーを採用したことから、「貴婦人」の愛称で呼ばれていました。

「C57形」は、製造時期により4つのグループに分けられます。
そのうち1937年から1940年にかけて製造された、「1次形」と呼ばれる最初のグループ(138両)は
もっとも美しい容姿とされ、「貴婦人」と呼べるのは「1次形」のみとする向きもあるようです。

ここにいるのはトップナンバーの1号機。
落成後に「水戸」「宇都宮」「千葉」と転籍したのち、1954年(昭和29年)「新潟県」「新津機関区」(にいつ)に配属。
1961年(同36年)2月9日には土砂崩れ現場に進入してしまい脱線転覆、大破の憂き目にあっています。
このまま廃車となってもおかしくない状態でしたが、4月から5か月の修復工事を受け9月に本線に復帰しました。
そんな修羅場をくぐっていたんですね。
その後は1972年(同47年)まで同所に所属し、同年5月の「植樹祭」の際には「お召列車」のけん引も担当。
9月下旬から10月初めに「千葉県」「佐倉機関区」に一時配置された後、10月3日に「梅小路機関区」に移動。
そのまま10月10日の「梅小路蒸気機関車館」開館を迎え、現在に至ります。
最初の配属から1度も車籍を失ったことがない、生涯現役を貫く希少な車両です。


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国内最大の旅客用蒸気機関車である「C62形」です。
「京都鉄道博物館」には、静態2両+動態1両の3両が保存されています。
製造数が49両と比較的少数派なのに、この数は考えてみるとすごいことですね!

「扇形車庫」にいるのは静態保存の1号機と、この2号機です。
1948年(昭和23年)に落成し、最初は「広島県」「糸崎機関区」に配属。
2年後に「大阪市」「宮原機関区」に転属し、翌1951年(同26年)に「鷹取工場」(たかとり)に検査入場?します。
その際、「除煙板」にステンレス製の「つばめマーク」が取りつけられました。
これが2号機の最大の特徴となり、のちに「スワローエンゼル」の愛称で親しまれることになりました。
トップナンバーの1号機と合わせて保存されるようになったのも、このマークがあったからといっていいでしょう。


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この日、「C62 2」には火が入っていました。
大好きな機種の1つなので、これはうれしかったですね。

実は前年の2017年10月から検査に入っていて、ボイラーの大改修工事が行われたそう。
この日は構内運転復帰への最終調整だったようで、3日後の2018年11月1日に無事復帰を果たしました。


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車庫の窓から差し込む光が「C62 2」のボディを照らします。
ただよう煙があったおかげで、「天使のはしご」ができていました。


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しばらくすると、ボイラー上部の「安全弁」から勢いよく蒸気を噴き出しました。
今すぐにでも走り出したい!というような勢いを感じます。


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さらには「シリンダー」?付近に接続されたホースからも。
本来は後方に出るものですが、そうすると庫内に充満してしまうからでしょうか。
こんな動きを見てしまうと構内運転とはいえ、実際に走る姿を見たかったですね。


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構内で運転されている「SLスチーム号」
この日は「C56形160号機」がけん引していました。

「C56形」は、「炭水車」を連結した小型の「テンダー式蒸気機関車」
線路規格の低い「簡易線」向けに「タンク式」「C12形」が造られましたが、
「タンク式」ゆえに搭載できる石炭と水が少ないため、その用途は短距離路線に限られていました。
そこで「炭水車」を連結し、運行距離を延長できるようにしたものが「C56形」です。
1935年(昭和10年)から1939年(同14年)の間に160両が製造されました。

この160号機は、ここに保存されている車両の中では異色のラストナンバー機。
1939年に製造され、1972年(同47年)に「梅小路機関区」に配属されました。
その後は全国各地へ出張運転を行ってきましたが、2018年5月27日をもって本線運行を終了。
同年8月18日から、構内での「SLスチーム号」けん引の任についています。
「C57 1」とともに車籍を失っていない、希少な機関車の1両です。


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構内路線の片道500mを往復する「SLスチーム号」の全容。
この日の客車は2両編成でしたが、多客期には増車されるのかな?
窓の部分は大きく切り抜かれ、ガラスは入っていないようです。
屋根付きの「トロッコ列車」といった感じ。
機関車直後の席は「炭水車」を挟んでいるとはいえ、機関車がすぐそばにいるので楽しそうですね(^^)



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次回から新シリーズ、沖縄・秋のリベンジ編です。

by sampo_katze | 2019-09-07 21:00 | 博物館・美術館 | Comments(0)


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