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北方民族博物館の常設展示・環境と調和した北のくらし&北の自然の中で
冬の網走訪問2019編・第4回


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「鮮やかなトーテムポール」


「北方民族博物館」「常設展」の続き、後半です。
前回は「北方民族」たちの生活における「衣・食・住」がテーマ。
厳しい北方の環境に対応するため、さまざまな技術を開発・駆使していることがわかりました。

そして後半の「環境と調和した北のくらし」のエリアへ。
「精神世界」「移動手段・生業」の2つのテーマで展示されています。
最後の「北の自然の中で」のエリアでは、伝統を生かした工芸品を紹介しています。
今回はこの2つのエリアを見ていくことにします。


表紙の写真は、円形のエリア中央にそびえる「トーテム・ポール」です。
「トーテム・ポール」というと、国内では公園など屋外にあることがほとんど。
ですが、屋根を支える家柱としての役割をするものもあるんですね。
こちらは「トリンギット」という「北西海岸インディアン」の住居に使われていたもの。
詳しくは説明文を参照してください(^^;

「北西海岸インディアン
 北アメリカの北西沿岸地域には、トリンギット、クワキウトル、ハイダといった、
 一般に北西海岸インディアンとよばれる部族が住んでいる。
 かれらは、食糧の大部分を海の豊富な資源、とくにサケにたよっている。
 また、家、カヌー、トーテム・ポールや衣類、マットなど生活に関する多くのものが
 「シーダー」(※)とよばれる木やその樹皮で作られている。
 「冬の儀式」やそれにともなう祭りや、「ポトラッチ」などの儀礼が、冬の間に集中して行われることが、
 これらの部族の特徴となっている。
  ※北アメリカ産のヒノキ科の常緑針葉樹」


「トーテム・ポール ハウス・ポスト〔家柱〕
 民族/北西海岸インディアン トリンギット
 年代/1990年 ウェイン・プライス(Wayne Price)作
  冬の間、トリンギットが利用する大型の木造住居には、屋根を支えるトーテム・ポール(ハウス・ポスト)〔家柱〕がある。
  レッドシーダー(※)とよばれる針葉樹が用いられ、室内の四隅にそれぞれ1本ずつ立てられる。
  表の面には、一般にその家の属する集団が所有している紋章としての動物や、
  神話に登場する人物などの彫刻がほどこされている。
  ここに展示しているハウス・ポストは、上から「ワシ」、「クマ」、「シャチ」、
  「オオカミに似た架空の動物」を表しており、トリンギットの彫刻家ウェイン・プライス氏の作品である。
  トーテム・ポールにはハウス・ポストのほかに、家のそばに独立してそびえる「独立柱」、死者の墓地に建てる「墓柱」、
  家の正面の壁の中央にはめこんである「入口柱」がある。
   ※北アメリカ産のヒノキ科の常緑針葉樹(和名アメリカネズコ)で、木質は赤みを帯びる。」

※説明板より引用、以下同じ










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こちらは「クワキウトル」という「北西海岸インディアン」の「トーテム・ポール」。
色はついておらず、素材のままになっています。
その分、彫刻がとても細かくほどこされていますね。

「トーテム・ポール
 民族:北西海岸インディアン・クワキウトル
 地域:カナダ・ブリティッシュコロンビア州
  1972年に行われたポトラッチ(饗宴や贈り物をともなう重要な儀礼)の際に、
  主催者である「ハマツァ」結社の長からの依頼により制作された。
  トーテム・ポールには、その長が属する集団の紋章である像があらわされている。
  一番上には、「ハマツァ」結社の長を抱いたハイイログマが、その下にはワタリガラスが彫刻されている。
  ワタリガラスはクワキウトルだけでなく、広く北西海岸インディアンにとって身近な動物であるとともに、
  神話の中では英雄的な存在である。一番下はクワキウトルの伝説によく登場する
  "Tsonequa"(ツォネクァ)とよばれる人喰い女で、ポトラッチで贈られる「銅板」を抱いている。
    製作者:Sam Henderson(サム・ヘンダーソン)  トーテム・ポールの下に名前が刻まれている。
    素材 :レッドシーダー(北アメリカ産のヒノキ科の常緑針葉樹)」



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さまざまな仮面。
下の1点のみが「北西海岸インディアン」のもの、ほかはすべて「イヌイト」のものです。
下の仮面の左右の板に描かれているのは「ワタリガラス」(raven レイブン)かな?


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「クワキウトル」の冠と衣装。
「冬の儀式」の際に催される劇で使われるもののよう。

「冬の儀式
 夏の間、人びとは集落をはなれ、分散して生活しているが、冬になると一つの集落に集まり「冬の儀式」を行う。
 これは11月から2月にかけて催され、北西海岸インディアンの各部族に共通している。
 「冬の儀式」は秘密の入会式をともなう集団(秘密結社)によって行われ、
 そこでは各部族に語りつがれている神話が劇として上演される。
 クワキウトルの秘密結社の集団は、「アザラシ」と「雀」(すずめ)の二つの集団にわかれている。
 「アザラシ」の集団は格づけされた数多くの結社からなりたっていて、その最高位である
 「ハマツァ」結社は、仮面をつけた踊り手などから構成されている。」


「ハマツァの冠・衣装
 民族  :クワキウトル
 地域  :北アメリカ北西海岸
 使用年代:1940年代」



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同じく仮面。
先の衣装とは別の演者が使うものでしょうね。

「ハマツァの仮面
 民族:クワキウトル
 地域:北アメリカ北西海岸
 「冬の儀礼」において使用される仮面」



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「北方民族」が使う楽器のいろいろ。
弦楽器や太鼓が並びます。
右上の太古の表面にはまたも「ワタリガラス」が描かれています。

「北方の音と儀礼・芸能
 北方地域のシャマンが超自然的な世界の神霊や精霊と接触するために、
 我を忘れたトランス状態になるには、太鼓が不可欠である。
 また一方で、家のなかに閉じこもりがちな長い冬の間、
 人びとが健康的に生活するための心理的な要素として、音楽の存在はみのがせない。」



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ここからは「北方民族」の移動手段を。
地上の移動手段としてポピュラーな「犬橇」(いぬぞり)です。

場所によってはより大型の「トナカイ」がけん引する橇もありました。
もちろん展示されていましたが、ここでは省略します。

「移動手段 橇
 北方地域では橇が狩猟や漁撈活動、あるいは移動生活にともなう家財道具の運搬などに利用されてきた。
 犬は早くから橇引きに利用されてきた。当初、橇は数頭の犬で引かれることが一般的であった。
 欧米文化の流入にともなう毛皮獣の需要のたかまりから、イヌイトなどの犬橇は機動性が重視され、
 10頭をこえる多頭数の犬で引かれるようになっていった。
 一方、北方ユーラシアのトナカイ飼育民の多くはトナカイ橇を用い、ツンドラでは夏季もトナカイ橇が利用されてきた。
 トナカイ橇も犬橇も、地域・民族によって牽引(けんいん)獣の編成や牽引具、橇の形などにさまざまな違いがある。」



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続いては水上を移動するための舟。
手前は「トリンギット」の「丸木舟」、奥は「エスキモー」の「カヤック」です。

「移動手段 舟
 北にくらす人びとは、各地域で得られる材料から狩猟や漁撈、移動・運搬など目的によって
 さまざまな舟をつくり利用してきた。
 木の幹をくりぬいた丸木舟や、丸木舟に板を縫合して耐波性、積載能力を高めた板綴(いたつづ)り舟、
 板を組み合わせた板舟などは木材が比較的豊かな地域で用いられていた。北方針葉樹林帯では白樺(しらかば)など
 樹皮製のカヌーが用いられていた。
 極北地域の舟は流木を素材とした骨組みに海獣の皮を張った皮舟が用いられてきた。大型の皮舟(ウミアック)は
 移動や大型海獣の狩猟用として、また小型であるが耐波性にすぐれたカヤックは小型海獣狩猟用に、
 それぞれ不可欠であった。
 北アメリカの樹皮製カヌーやカヤックには今日のスポーツボートの原型をみることができる。」



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雪上での移動を可能にする歩行具の数々。
左の「ラケット」のような形をしているのが「かんじき」
国内で見られるのは丸い形をしていますが、こんな形をしたものもあるんですね。
右は「スキー」のような形をした歩行具。
雪上では歩くよりは滑る方が早いということでしょうか。

「雪上歩行具
 かんじきとスキー型歩行具は北方の積雪地帯で発明された。
 雪上歩行具は橇(そり)とともに積雪地域での狩猟・漁撈(ぎょろう)活動にきわめて重要なはたらきをもつ。
 かんじきは北方全域に広く分布し、日本でも北海道や東北地方で輪状のものが用いられてきた。
 北アメリカでは、使用目的によって、外わくの構造、横木の有無、革紐(ひも)や腱(けん)の編み方のちがいから
 多様な形態がしられている。
 北ユーラシアの狩猟・漁撈民やトナカイ飼育民の多くは、スキー型の雪上歩行具を利用してきた。
 狩猟用として、裏面にトナカイ、ヘラジカの脚の毛皮やアザラシの毛皮を張り、消音と滑り止めの効果をもたせている。」



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雪上移動の必需品の1つ「雪眼鏡」(ゆきめがね)、つまり「サングラス」ですね。
素材は竹?で、目の部分に細いスリットが入っています。
スリット部分にはレンズはもちろん、カバーも何もありません。
ですが、これだけで良好な視界を得ることができるようになっています。


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最後の「北の自然の中で」の中にある「現代に生きる工芸」のエリアから。
伝統的な技術と新しい素材を組み合わせて、現在も作られている工芸品の数々が展示されています。
こちらは「ボタンローブ」
「トーテムポール」に刻まれた彫刻を組み合わせたようなデザインがほどこされています。

「現代に生きる工芸
 北方の諸民族がつくる現代の工芸品には、新しい素材や技術が伝統とうまく融合して、
 芸術的価値や商品価値が認められるようになったものが少なくない。
 常設展示室の民俗資料は19世紀から20世紀前半に使用されたものが大部分であるが、
 ここでは今もつくられている工芸品を紹介している。
 バスケットのように素材もつくり方も伝統をそのまま受け継いでいるものもあれば、
 木製の容器やトナカイ角のスプーンなど素材の持ち味を活かしながら現代的な工具で製作されるものもある。
 また、衣類や壁掛け、石の彫刻など、新しい素材が取り入れられ、デザインや技法が守られているものもある。
 すぐれた技術と独特の世界観を表現した工芸品は、これからも世に送り出されつづけるだろう。」


「ボタンローブ
 民族/北西海岸インディアン/ツィムシャン
 地域/米国/アラスカ/メトラカトラ
 年代/1990年代 F.ギャスリー制作」



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「ロシア」極東部の「沿海州」に住む「ウリチ」という民族の「スリッパ」
とても暖かそうですね。

「スリッパ
 民族/ウリチ
 地域/沿海州」




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次回は、天都山展望台と博物館網走監獄です。

by sampo_katze | 2021-01-08 21:00 | 北海道 | Comments(0)


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